先月発売したd:matcha(ディーマッチャ)の冬の新商品、ジンジャーほうじ茶。寒い冬にぽかぽかあったまる、生姜の風味がしっかり利いていると、お客様からご好評いただいております。ジンジャーほうじ茶は、鹿児島県の農家さんから直送されたフレッシュな生姜を贅沢に使っています。
今日はそのジンジャーを作ってくださった生姜農家さんに生姜生産のこだわりや収穫の様子、気になることをわたくしd:matcha Kyoto magazineのmisatoがどんどんインタビューしてみました。
鹿児島県鹿屋市(かのやし)の生姜農家、中島さん
中島さんは鹿児島県鹿屋市(かのやし)で生姜をはじめとした野菜を栽培する農家さんです。れっきとした九州男児。きりりとしたお顔立ちと、質問ひとつひとつに丁寧に答えてくださる優しい人柄が印象的です。
こちらのお写真はドイツの農業研修されたときのもの。真ん中が中島さんです。
農業を始めたきっかけ~自然が好き。地元で暮らしたい~
(misato)生姜生産を始めたきっかけは何でしょうか?ご実家が生姜農家だったとか?
(中島さん)うちは実家は農家ではないんです。実は、大学卒業後、就職しようと就活をして一般企業に内定までもらっていたんです。僕は自然が大好きで、地元が好きだったから、就職してもいつかは鹿屋市に戻ろうと思っていました。でも、いずれ戻るくらいなら今やろうと、卒業してすぐ農家になることを決意したんです。
生姜を栽培することになったのは、まったく偶然でした。地元の企業が生姜の仕入先を探しているということで、それなら僕が作ろうと思い、思い切って生姜の栽培を始めました。やっているうちに面白くなって、少しずつ広げて今では当初の5倍程度にまで広げました。
[こちらが畑の様子。芽が出たしょうがに水分保持と雑草抑制の為のもみ殻を被せているところ]
実際に足を運んで見て学ぶ、自分の頭で考えて工夫する
(misato)実家が農家ではないとなると、生姜の栽培技術を磨くのは大変だったのではないでしょうか?
(中島さん)はい、試行錯誤でした。周りに技術を教えてくれる人がいない分、他県にまで出向いて行って、実際に農地を見たり、品評会を見学して、他の農家さんの生産技術を勉強しました。ドイツに農業研修に行ったこともあります。そういった知見を大切にしながら、自分の農地や性格にあったやり方を自分で考えて見つけるように心がけています。
例えば、生姜の貯蔵は防空壕(ぼうくうごう)を使っています。
(misato)え?防空壕って戦争時に避難場所として使われたあの防空壕でしょうか?
(中島さん)はい。鹿屋市にはまだ防空壕がところどころ残っています。生姜の貯蔵に適した環境は、気温15℃、湿度90%と言われています。実は、防空壕の中はまさにこの状態に保たれていて、生姜の貯蔵には最適なんです。でも、まだまだ生姜のことでわからないことはたくさんあります。理想の生姜生産には到達していません。もっと技術を磨かなければ。
[防空壕の中の様子。戦火の爆風を防ぐために、中は奥に細長く、コの字型になっているのだとか。今は生姜の貯蔵庫として活用されています。]
2万本の生姜を収穫。収穫時期が一番忙しい。
(misato)理想の生姜・・?生姜については初心者なもので、まずは生姜の作物としての特徴や生産の様子について教えていただけないでしょうか。
(中島さん)生姜は亜熱帯気候の東南アジアが原産の作物です。温暖な気候で水はけのよい土地を好み、でも亜熱帯気候の植物なので水分も必要とします。
今回ジンジャーほうじ茶用に出荷した使っているのは、黄ショウガ(黄金ショウガ)の親生姜です。親生姜の方が、生姜の水分が少なく味が濃縮されます。
生姜生産の1年のスケジュールを大まかに説明すると、
-4月種まき
-5月藁(わら)をしく
-6月追肥、生姜の根茎が地表出ないように土を盛る「土寄せ」
-7月土寄せ、追肥
-9月土寄せ
-11月1日~30日くらいまで。霜が降りる前に収穫
ー収穫後は2月に堆肥
収穫期の11月が1年で一番忙しく、この時期は地元のおばちゃんたちに作業を手伝ってもらっています。みんないい人ばかりで助かっています。収穫期以外は1人で作業をこなします。
収穫は機械で根茎のすぐ下をカットした後に、生姜に傷がつかないように僕が手で抜きます。今年も僕ひとりで約2万本の生姜を抜きました。
(misato)2万本!すごい量です。
(中島さん)こちらが収穫に使う機械です。ニンジン用の掘り取り機を生姜の収穫に代用しています。
生姜を抜いた後は、手伝いに来てくれる地元のおばちゃんたちがそれを拾って、カットしたり後工程を進めてくれます。
この時期は朝6時か6時半には畑に出ています。夜は片付け、次の日の準備で21時、遅いときは22時くらいになることもあります。
農業の楽しさ~自然と共に生きる~
(misato)収穫時期は本当にお忙しいですね。生姜生産をしていて大変なこと、つらいと思ったことはありませんか?
(中島さん)うーん、それが、特につらいと思ったことはなくて。周りからはもっと休んだ方がよいんじゃないかと言われることもあるんですが、農作業が全然苦じゃないというか・・農業が好きすぎて楽しいんです。これって変ですか?
(misato)変じゃないと思います(笑)よほどお好きなんですね。一体、農業のどんなところに惹かれていらっしゃるのでしょうか?
(中島さん)改めてどういうところかと聞かれると困りますが・・・。朝日が昇っただけで幸せな気持ちになれるんです。これってわかってもらえるかな・・(ちょっと不安そうな中島さん)
[こちらがご自宅の様子。広い敷地で緑に囲まれてのびのびと暮らしていらっしゃる様子がわかります]
理想の生姜とは?
(misato)先ほどおっしゃっていた「理想の生姜」というのはどんなものなんでしょうか?
(中島さん)僕が理想としているのは、ちょっとわかりづらいかもしれませんが、床の間に飾りたくなるくらい品のある生姜です。大きさも十分にあって形も味もバランスが取れた生姜です。やっぱりどういうものかわかりづらいですよね・・。実際にどういうものかお見せできたらよいのですが・・。とにかく、もっともっと工夫と経験の積み重ねが必要です。
[こちらは収穫された生姜。この生姜も十分に立派ですが、理想の生姜はきっともっと立派なものに違いない]
「安全安心なのは当たり前。その先が大事」
(misato)ドイツに農業研修にいかれたとお伺いしましたが、そこでどんなことが学びになったのでしょうか?
(中島さん)環境を大切にした農業のやり方や社会の考え方がとても勉強になりました。ドイツでは消費者の考え方も進んでいて、化石燃料を使う農業、ビニールハウス栽培の作物を敬遠する人もいました。そういうお客さんは、ビニールハウスで作ったものと露地栽培の野菜があれば、露地栽培の野菜を選択していました。
われわれ農家は食べ物を作っているんですから、安全安心なものを作るのは当たり前です。大事なのはその先。その作物が生まれる環境をどれだけ大切にできるか。
僕が住んでいる地域も、昔に比べると蛍の数が減っています。昔は川にウナギが産卵にのぼってきていましたが、今では見られなくなりました。
[こちらが家の近くの川だそうです。自然あふれる場所です]
今僕が住んでいる場所には、川が流れていて畑も山もある。将来は養蜂にチャレンジしてみたり、オリーブを植えてオリーブ油を作ってみたり、自分が歩ける範囲の山里を活用して、資源を循環させながら暮らしていきたいと思っています。
また、地元の自然を散策して楽しめるコースを作って、消費者の方にも楽しんでいただけるようなそんな場所づくりもしていきたいと思っています。
インタビューを終えて
インタビューを通じて、中島さんがいかに農地や自然を大切に考えていらっしゃるかが理解できました。
私たちは普段、農産物を商品として「消費」することだけに関心を寄せがちですが、中島さんは農産物を生み出す里山の循環、自然の移ろい、生き物たち・・私たちが知らないたくさんの風景を目にされているのでしょう。
おいしい生姜の裏に、美しい里山の風景や、それを愛する人の営みが流れていることを知ると、ちょっぴり嬉しくなります。
ジンジャーほうじ茶を飲む度に、理想の生姜を熱く語る中島さんのことが思い浮かびそうです。
中島さんが栽培された生姜をたっぷり使った、「ジンジャーほうじ茶」の商品詳細はこちら!寒い冬に心も体もぽかぽかにしてくれるお茶です。みなさんもぜひ一度お試しください。