d:matcha Kyoto magazine

和束町にて、お茶農家&カフェを営むd:matcha Kyotoのブログです

【お茶コラム】長岡市・番茶の正体・帰省の折には

お茶コラム

 こんにちは、d:matcha Kyoto magazineのTakeshiです。
 毎日の生活の中で、お茶が登場するシーンについて、コラムというカタチでご紹介していきます。

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 故郷を思い出す味が、ありますか?

 多くの人が帰省する、お盆の季節。

 それぞれの故郷に帰ると、思い出すのは懐かしの味。

 それは、人によっては両親のつくる味噌汁であったり、地元の郷土料理、はたまた地元のスーパーでしか販売していないお惣菜だったりするかもしれません。お茶が思い出の味として刻まれる人もいるでしょう。

 私は新潟県長岡市の出身ですが、特に思い出すのはユウガオに塩漬けのクジラの脂をたっぷり含んだ皮が入った「くじら汁」や、砂糖の入った甘い茶碗蒸し、大量の枝豆がおやつ・おつまみで出てくること(新潟県は枝豆の消費量日本一!)、栃尾の油揚げ、長岡の生姜醤油ラーメン、学校の目の前のパン屋さん(マルシャン)、、列挙するのはキリがないくらい、たくさんの「食と味」が、ひとつひとつの思い出に結びついています。

 そんな思い出の味はたくさんありますが、最もパーソナルな「家族との食卓」で深く私に根付いているのは、「番茶」に関する思い出になります。

番茶?ほうじ茶?地域による「番茶」の違い

 実家にいた時は、母が淹れる「番茶」をよく飲んでいました。

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 アツアツの「番茶」を、ふうふう冷ましながら飲む。母の舌は熱さに強かったのか、最初の一杯を飲むのが非常に早く、矢継ぎ早に二煎目を淹れるため、それに付き合ってお茶を飲んでいる私も自然と舌が鍛えられました。

 実家を離れると自分でお茶を淹れる機会もなくなり、アツアツの「番茶」を飲む機会がなくなっていました。ひとり暮らしをはじめた18歳の時に、急須を買って家で一人で茶葉からお茶を淹れることは想像もしなかったなあ・・と当時を振り返ります。

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 そんなある日、在学中にフィールドワークの一貫で農村に調査にいったのですが、その時に農家の軒先で、お茶を頂く機会がありました。

 

 「番茶で申し訳ないけどね」農家さんは、そんな謙遜とともに、お茶を淹れて下さいました。私は、飲む前は特段気を払うこともなくお茶を口にした時に、はっと我が家の「番茶」を思い出したのです。・・・この味と違う。

 

私:「・・・これが番茶っていうんですか?」

農家さん:「ほう、番茶は飲んだことがない?」

私:「いえ、毎日番茶は飲んでいました・・?」

農家さん:「あー、これが私たちの番茶だからねえ・・」

私:「・・?どういうことですか?」

農家さん:「番茶は普段のお茶。普段のお茶が違うんでしょう」

 

 その際は、あまり深く気に留めなかったのですが、お茶の勉強をした今では、その理由がよくわかります。

 実は「番茶」というのは地域によって指し示すお茶の種類が異なるのです。

 ↓下記のサイトに解説がありますが、番茶の定義とは諸説ありまして、

番茶とほうじ茶ってどう違うの?|お茶コラム|京都 三条「ちきりや」お茶通販 創業安政元年

では、番茶とはなんでしょう? 番茶の由来には諸説があります。

①「番傘」や「御番菜(おばんざい=京都弁でお惣菜のこと)」という言葉のように「番」という文字には「ふだん使い」という意味もあるので、番茶と呼ぶ説

②一番茶や二番茶の間に摘んだものを表すという説

③遅く摘む茶という意味の「晩茶」から転じた説

こうしたものが、製茶技術の発展にともない、下級煎茶のことをさすようになりました。

とあります。農家さんがおっしゃったのは①で、普段に飲むお茶、という意味で「番茶」だったのでしょう。

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 さて、私が実家で飲んでいた「番茶」は「茎ほうじ茶」のことでした。ほうじ茶の中でも、茎の部分だけを集めて焙じた茎ほうじ茶は、カフェインもほぼなく、茎部分から甘みが解けるように溶け出し、ほうじ茶ながらもじんわりとした味わいが楽しめます。

 家で、お湯の温度を気にすることなく、がさっと茶葉をすくい、急須に熱湯をどどっと注ぎ、なみなみとカップに注ぐ。今考えると、子どもと楽しむには熱湯のアツアツは無理があったのかかもしれませんが、家族で時間を気にせずいつでも飲める、というにはこの茎ほうじ茶がちょうどよかったのだと思います。

 ※特に、北海道や東北の方では、ほうじ茶のことを「番茶」と呼称する地域が多いそうです。詳しく知りたい方は下記リンクより

番茶の色、地域でなぜ違う 東京は緑・北海道は茶… |MONO TRENDY|NIKKEI STYLE

あなたにとっての「番茶」は何でしょうか?

 私は、何かオススメのお茶がないか、という質問を頂いた際には、差し支えがなければご出身を伺うようにしています。お茶は、非常に地域に根ざした飲み物でもあるので、その方のご出身によって「当たり前となるお茶」が異なることがあるのです。

 

 特に、「番茶」には、地域性が現れます。あなたの故郷で、あなたの食卓で登場した「番茶」は、どんなタイプでどこの産地のお茶でしょうか?帰省したことをきっかけに、家族に訊いてみると面白いかもしれません。そのお茶こそが、あなたが最もほっとした気分で味わうことができるお茶になるかもしれません。

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