d:matcha Kyoto magazine

和束町にて、お茶農家&カフェを営むd:matcha Kyotoのブログです

【茶ニュース】日EU・EPAの大枠合意・お茶業界に与える影響は?

こんにちは!d:matcha Kyoto magazineのTakeshiです。

本日はライトながらも、真面目な話題をお伝え致します。

 昨今大きなニュースとして報道されている、日本とEUのEPA。細かい説明は各種ニュースサイトをみて頂ければと思いますが、これは我々お茶業界にどのような影響を与えるのでしょうか?

f:id:watanabecook:20170708061940p:plain

※上記画像は、リンク先より抜粋致しました。

 上記を見ると、日本→EUの「緑茶」については、現状の関税が無税~3.2%だったところが即時撤廃となっていますね。

 政府が発表している資料をみても、重要な輸出作物としてとらえられている茶について、即時撤廃を獲得したと成果が挙げられています。

f:id:watanabecook:20170708062228p:plain

 ※ 日EU経済連携協定(EPA)に関するファクトシート より

 

ということで、これだけを見ると「関税がかからないので、緑茶がEUに輸出しやすくなった!」というのが茶業関係者にとっては非常にありがたい話なのですが、残念ながらすぐに対EUへの輸出が増える!といったわけにはいきません。

 お茶の輸出に関して、EUは実は関税以上に難しい問題をはらんでいます。それが、残留農薬基準です。

 

残留農薬基準(通称MRL)とは?

残留農薬基準、通称MRLについては

EU における残留農薬に関する規制 の中に解説があります。

EU では食品および飼料に含むことができる残留農薬の上限量を、「残留農薬基準(MRL: Maximum Residue Level)」として製品ごとに定めている。MRL の設定されている農薬(有効 物質)の数はおよそ 1,300 種類にのぼり、現在使われていない農薬も含まれている。MRL は、 製品 1kg 当たりに含むことができる農薬量(mg/kg)として示される。

ちなみに、このMRLを用いた農薬基準の考え方自体は日本も同様であり、要は「含まれていても問題がない」量の農薬が決められています。

 

 MRLがどのような影響をお茶の輸出に与えるかでいうと、H19年度のレポートで古い(それもドイツ単体)ものですが、こちらにドイツへ茶を輸出することの概況がまとまっています。

農林水産省/ドイツ:緑茶

➢弱み
残留農薬問題
日本茶の市場ポジションが非常に弱い原因は、「Test」誌をはじめとするドイツのジャーナリズムが報ずる「残留農薬レベルの高い日本茶を飲まないように警告する」主旨のレポートがもたらす日本茶の悪いイメージにある。また、一般的にいって、日本は輸出に際し MRL について十分な配慮をしていないとみられている。

・・・日本のお茶は「残留農薬レベルの高い」とまで書かれています。要は「日本のお茶は農薬があるから危ない」というイメージがついてしまっている、と記載があります。

 

 しかし、残留農薬レベルの高さというのは単に農薬の使用量ではなく、シンプルに「日本とEUで使用する農薬の基準・種類が違う」ことからきています。問題は、その量ではなく「含まれていてもいいよ」と認められる農薬の種類です。

 

 実際に、先ほどの対ドイツ向けのレポートの中に、EUへの輸出を増やす方法として記載されているのは「使用量を減らす」ことではなく「農薬の登録を進めること」が書いてあります。少し長いですが抜粋しますと、

②EU での農薬登録
輸出向け茶生産に日本の農薬が不可欠で、それを継続使用する必要がある場合、その農薬を EU で登録しなければならない。(中略)EU で農薬登録を進めるには、製薬企業が日本政府の支援とともに、様々な調整を行う必要がある。


日本茶に使用される農薬の多くは、日本の製薬企業が製造しているもので、日本の茶産業での使用に特化している。従って、日本では登録されていても、他の国では使用されていないため登録もされていない。

 

日本の小規模な茶生産者は、農薬登録を進めるだけの資源を持っておらず、日本の製薬企業も EU での農薬登録についてのインセンティブはほとんどないといえる。また、日本からの茶輸入量が少ないため、EU の輸入業者も、日本でしか使用されていない農薬の登録のインセンティブはほとんどない。農薬の登録には時間と資金が必要となる。さらに、日本で使用される農薬は頻繁に変更されるため、農薬の登録についても円滑で素早い変更を行なうための工程をつくる必要がある。

・・・とありますが、要は日本茶の生産に使用される農薬が日本での茶産業に特化しているために、それがEUの農薬基準には、そもそも登録されておらず、結果として「EUでは認められていない農薬を(多く)使用しているので輸入できない」という判断になるのです。

 

 以前には、福島原発事故による放射性物質にかかる各種証明書が必要(現在でも産地・品目によっては必要)になり非常に輸出しづらい環境でしたが、最近ではそれらの規制も緩和され、環境は整ってきています。

EU等向け輸出証明書等の概要について:農林水産省

 もちろんこれらの農薬登録などが進むことになれば、現状の日本茶を輸出することができますが、そもそも農薬を使わずに育てることが出来れば、これらの問題は解決されることとなります。

 

ということで、d:matcha Kyotoでは

 日本では、元々有機栽培で栽培されているお茶の量は非常に少ないと以前の別の記事で記載したことがありますが、

 世界に向けて日本茶を発信していく使命を持つd:matcha Kyotoでは、無農薬栽培・有機認定されるお茶の栽培を進めてまいります。もちろん高い品質のお茶を生産することは大前提ですが、スタートラインに立つためにも有機栽培を前提に進めていくことが肝要かと考えています。

 

 一筋縄ではいかない有機栽培ですが、しっかりと目標をもってこれからも推進していければと思います。

 

・・・以上です!真面目な話にお付き合い頂きありがとうございました!

-------------------

d:matcha(ディーマッチャ)は生産スタッフが愛情をこめて作った、京都・和束町産のおいしい茶葉+お茶を美味しく淹れられる、ティーウェア・茶器を販売しています。今回紹介した新茶以外にも、様々煎茶のご用意があります!

オンラインストアこちら!

f:id:misato_mikan:20161110234019j:plain