d:matcha Kyoto magazine

和束町にて、お茶農家&カフェを営むd:matcha Kyotoのブログです

【お茶コラム】『宇治茶』を世界へ~宇治茶UJICHAがグローバルブランドになる日~

こんにちは、d:matcha(ディーマッチャ)のmisatoです。今日は、日本の宇治茶が、将来的には世界ブランドになるかもしれない、というお話をさせていただきます。

GREAT UJICHA TO THE WORLD

先日、京都JETROが主催する「国際シンポジウム-宇治茶を海外へ-」というイベントが行われました。その名の通り、宇治茶を世界に広めるための決起集会のようなもので、たくさんのお茶関係者の方々が参加されていました。

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会場の様子は写真に納めることはできませんでしたが、会場はほぼ満席に近い状態で、100名を優に超える人数の茶業関係者の皆さんが熱心に聞いていらっしゃいました。

今、世界で抹茶MATCHAがアツい!

今、世界では日本茶green tea、とりわけ抹茶MATCHAに対して熱い視線が注がれています。

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世界ではヘルシー志向の高まりを背景として、コーラのような清涼飲料水を飲む代わりに、お茶を飲む、という方が増えています。(もちろんまだまだ砂糖入りのお茶が飲まれていることも多いのですが、彼らにしてみるとコーラを飲むよりヘルシーだということだそうです)

その中でもgreen tea、とりわけ抹茶は、茶葉を粉末にしているため茶葉の栄養を丸ごと摂取できるというわかりやすさもあって、「スーパーフード」として認知が高まっており、消費量が急激に伸びています。

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私は今年5月まで米国に住んでいましたが、一般的なスーパーでティーパックのgreen teaが置いてあるのは当たり前。ヘルシー系スーパー大手や茶葉専門店ではMATCHAコーナーまであるのが当たり前、という状況を見てきました。

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(こちらはアメリカの茶葉専門店『TEAVANA』の抹茶コーナー)

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(こちらはカナダ発の茶葉専門店『DAVIDsTEA』の抹茶セット)

私の知り合いのおしゃれ女子は、抹茶と洋ナシなどスムージーにしたオシャレな飲み物をタンブラーに入れて持ち運ぶほどでした。健康や流行に敏感な人々に支持されています。

宇治茶を世界へ広める

日本茶の輸出が急激に伸びている

統計によると、日本茶の輸出額は2015年初めて100億円を突破しました。輸出量も4000トンを突破。その大半が抹茶の輸出と言われています。

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財務省貿易統計より京都JETROが作成した資料)

実は、政府も日本茶の輸出をバックアップしています。日本の国内市場が人口減少とともに縮小していく中、日本茶を海外で戦える輸出品目へと育てて、日本の農林水産業を盛り上げていきたい、という考えです。

日本茶の消費国が増えている

日本茶の最大の海外マーケットはアメリカですが、実は最近、新興国でのマーケットの広がりも注目されています。前段でお話ししたヘルシー志向の高まりに加えて、東南アジア等で経済の発展が著しいことや、世界的な日本食ブームを追い風として、消費量と消費地が広がっているのです。

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(データは2012年。農水省作成資料)
こちらの円グラフは少しデータが古いのですが、最新のデータではタイ、マレーシア、オーストラリアなどの新しいマーケットの成長も著しい状況となっています。

宇治茶の課題~UJICHAブランドを作る~

そんなマーケットの成長著しい日本茶ですが、実は、課題もたくさんあります。

MATCHAの定義は?~低品質抹茶の流通~

世界で売られている抹茶の品質はさまざま。実は、抹茶MATCHAに厳格な定義はありません。そのために、質の高いものも低いものも全部一様にMATCHAとして売られてしまっています。

抹茶は一般的には、碾茶と呼ばれる茶葉を、収穫前に日光を遮る「被せ」という工程を経てうまみ成分を増すなど、特別な生産工程を経て作られます。また、抹茶の品質は、その肥料の与え方や土壌の作り方など、生産者の経験や技術によって違いが生まれます。

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(これは被せの方法の一つ。黒いシートを直接お茶の樹にかけて日光を遮っています)

しかし、私が米国で見てきた中にも、粉末緑茶と混ぜたものや、中国で作られたもの、流通・保管により品質が低下してしまったものなど、これを抹茶と言ってよいのかわからないようなものも流通していました。

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今回シンポジウムで出た中でも、抹茶の定義をしっかり組み立てていかなければ、抹茶市場の健全な発展に大いに妨げになる、という意見がありました。質の良し悪しが消費者にとってきちんとわかること、ちゃんとした品質の抹茶を消費者が購入できる仕組みが今後必要になってくることでしょう。

ストーリーを伝える

今回、何名か海外から茶専門誌のライターが招待され、京都で宇治茶の生産加工から見学されたそうです。
彼らのうちの一人が「宇治茶に携わる人たちの情熱、こだわりに感動した。今まで数多くのお茶産地へ見学に行ったが、携わる人々の信念やこだわりは他と比べても目を見張るものがある。それをもっと発信していくべきだ」とおっしゃっていました。

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d:matchaのスタッフです。お茶を刈っています。

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細かい気配りやこだわりの強いに日本人の気質が、どうやらお茶づくりにも現れているようです。
京都で生まれ、発展したお茶文化は生産・加工・楽しみ方に至るまで、ストーリーや歴史を内包しています。そういった事柄を発信する努力が求められています。

宇治茶UJICHAは知られているか ~宇治茶ブランドの認知度~

実は、海外では「宇治」の認知度は高くありません。おそらくよほどの日本茶マニアや茶業関係者でなければ、日本のお茶の歴史を支えてきた「宇治」という地名の存在を知りません。
「京都」でさえ、海外では京都という地名を知っている人は多くても、「京都」=「日本の繊細で美しい伝統文化の中心、良いもの」というブランドイメージが必ずしもあるわけではありません。

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(写真はwikipediaよりお借りしました。上は東寺、下は清水寺。美しいです。)

プレゼンターのおひとりが興味深いことをおっしゃっていました。
「我々は、宇治が日本茶の一大ブランドであるということを当然の事実として認識しすぎていた。商だから、今まで品を海外販売する際に宇治産であるこことを強調してこなかった。これからはこのような考えは捨てて、きちんと買い手の立場を理解した上で宇治茶ブランドを作っていかなければならない」と。

海外から来られた茶専門紙の方は「日本茶のファンが増え、日本茶マニアが増えてくるにつれて、よりよい品質のもの、より本格的なものを求めるニーズが出てきている。日本茶発祥の地として、宇治茶の認知度が高まっていく可能性は十分にある」とおっしゃっていました。

紅茶でいえばダージリンやアッサム、フランスワインで言えばボルドーやブルゴーニュのように、日本茶がひとくくりにされるのではなくて、産地ごとに認識され、愛されていくようになると良いですね。

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宇治茶が世界ブランドとして認知される日も遠くはないかもしれません。宇治茶のこれからに期待です。

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日本遺産にも指定されている、和束町・原山の円形茶園

d:matchaは京都府相楽郡和束町宇治茶を生産しています。和束町宇治茶生産量の4割を占める重要な生産地です。
生産の様子はInstagramでも配信していますので、よければご覧いただけると嬉しいです。

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